翻刻
【右丁】
をしまれてちり行花にはつかしやうとまれて世になからふる身は
金原 定住
おそろしや人の心のくろ塚にこもれる鬼のありとこそきけ
大坂 一樹
雨はれてみとりのそはる八重山のいろは空にもまさりけるかな
同 寿賀女
あふきみれはいよ〳〵高し常磐山松はみ空のいろにつゝきて
同 菊守
おく山に身をかくすともくれ竹の世のうきふしはのかれさらまし
明石 信孝
ふくまゝに姿なひきつ女竹廓もしらぬ風をやとして
三木 雪好
みちぬへき汐のなけれは世々ふともひくことのなきすはの水海
阿波 食翁
いたゝきて出る黒木は大原女のけふりを立んしろ【代】にかふ【替ふ】らん
仝
うかれ女はうきを心にかこつらんまことかたれと聞人をなみ
堺 速樹
いとまなみ櫛けつる間もあら磯の浪にみたるゝあまの黒髪
仝
大君のしきます空に鳴神よつちへな落そかしこかりとも
仝 千晴
言の葉の花をしをりそ奥ふかく文のはやしに分いらんには
越ト山 菊好
ものおもひ承とり出して涙ほと硯へおとす水入の水
大津 鳰照
すま寺のたらひの額に手をかけて顔を鼠のあらぬをかしさ
信楽 花鳥屋
【左丁】 三十七
もろこしのうつし絵みれは海山も手にとるまてに間近也けり
仝
手習をきらふわらへは汐のなき硯のうみもからくおもはん
仝
うらかへとしりつゝ客にしろきかた出す碁席の石かれひかな
津 津留丸
草も木も生ひ出ぬふしはいろとらぬ墨絵にかきて美しき哉
松坂 歌良丸
見もしらぬ昔の人の言の葉をつたふる筆のなかき命毛
飯田 住守
月かけのすまぬをわひてうき世にや流れいつらん谷の下水
カケ川 弘麿
うき雲のこもるみ山に世のうきをのかれて住る人はをかしな
古沢 美智業
川竹のみさを立れと游女の身はうき世の【ママ】やとり定めす
塩尻 浦人
此神のさかえんほとは住よしの松も千とせと限るへしやは
佐野 糸屑
清らかにかたちつくれと濁りたる心は利根のなかれてふ身そ
仝
谷ふかみくらきに風のたゝりつゝものにあたるる音のはけしさ
中神 栲の屋
照月の雪の綿よりくり出す糸とやみらん布引の滝
引又 友隺
隅田川よとまぬ浪はむさしのゝはてをなかれて逃る水かも
太田谷 道彦
世々かけてあふけさかゆく言のはの玉津島根の神のみやしろ
野上 小松
文雅