翻刻
何恨有て斯迄大江戸に仇をなしたるなゐハうらめし
鯰てふ魚の業とハしらねども我大江戸に仇をなセしは
岩戸明〳〵神のつとへる日の本と知てふるへるよこしまのなる
天照す神の御国に生れてハかゝるなゐだに何恐るべき
日の本を《ルビ:揺壊|ゆりつふ》さんと工みてもゆるがぬ御代の君が石すえ
信の路を揺壊したる其なゐの吾妻川ハいらぬ冬の夜
親子を助けんとする哀さをしらでふるへるうらねしのなゐ
悪むべき物ハなゐなり《ルビ:鶏|とり》かなく吾妻の国をなと震ひけん
若き夫婦の有けるが夫ハ梁に打掛死したる故
妻の歎きひとかたならて泣ふしたるを見て□□
あきもせずあハれもせぬをあらしのゝ露になりたるなゐハうらめし
年《ルビ:廿歳|はたち》斗の婦人日頃翁稲荷を信仰しける故にや
梁ニ打れながら乳飲子を抱きて命助かりけれハ
親子とも黄なる泉に行べきをやらじと留し宇賀の御社
小梅の里の八百屋の娘七才になりけるが焼死せしと思ひ
居たりしに其翌日三回りの土手に其見当りし