翻刻
経を読誦しける処《ルビ:何方|いづく》ともなく老母今助け
遣わすぞと一声耳にひゝきけれハ彼梁自こけ
落たり老母歓び早々其処を這出したるとか
梁を背負ながらも妙法の利益の二字に命たすける
遠山何某旅にありし話にて家潰れ家内三人此
世をさりけれハ旅籠仮寝君がさちなれハ家にいまさハ如何あるらん
或医家舟に有て地震をしらてかへるに家倉
潰れるを見ていと興さめたる由聞けれハ
家も焼倉も落しが玉の緒の命計ハ拾ひけるか南
千早振神のいまさハ斯迄になゐの災ひ有ルへからしを
斯斗はげしきなゐを舟路にてしらでかへりしを
或人家潰たれど子供の机積重て有しゆえ其
蔭にて命助かりけると聞て
重なりし机に筆の命の命毛を引のばしゝハ神の恵か
《ルビ:最|いと》豊に暮せ人の家潰であやしの小屋に住るを見て