翻刻
【右丁】
かくてにゝきのみことはひうかのくに
にあまくたらせ給ひしかみやまの
かみの御むすめこのはなさくやひめと
御ちきりをこめさせ給ひつゝ御こたち
あまたうみ給ふ三十一まんざいを
へたまひてのちひこほゝてみのみこと【彦火火出見尊】
にくにをゆつらせ給ひつゝてんに
あからせ給ひけりひこほゝてみのみこと
のみこのかみほのすそりのみこ【火闌降命】は御
おとゝ【弟】のみことにくらゐをこえられ
給ふ事をやすからすおほしまし
けれはつねは御中よからすいかに
もして御おとゝのみことをうしなはんとそ
【左丁】
おほしめしける御おとゝのみことは御
あにのみことの御心のかくわたらせ給ふ
事はつゆしろしめさゞりけるにや
あるときあにのみことのひさう【秘蔵】し給ふ
こかねのつりはりをからせたまひてあを
うみにのぞんてつりをたれ給ふところに
いかゝし給ひたりけんうをにつりばりを
とられたまひけりみこと大きに
なけき給ひつゝかなたこなたを
もとめありき給へともうをのとりて
かいていにいりし事なれはつゐに
ゆくゑはなかりけりみことせんかた
なくてあにのみことにかくとの給ひ
現代語訳
【右丁】
こうしてニニギノミコトは日向の国に天降りになり、大山津見神の御娘である木花咲耶姫と契りを結ばれ、多くの御子をお生みになった。三十一万歳を経た後、彦火火出見尊に国を譲られて天にお帰りになった。彦火火出見尊の御子である火闌降命は、御弟の命に位を越えられたことを面白くお思いにならなかったので、常に御仲は良くなく、どうにかして御弟の命を亡き者にしようと
【左丁】
お思いになっていた。御弟の命は御兄の命の御心がこのようであることを少しもご存知なかった。ある時、兄の命が秘蔵しておられる黄金の釣り針をお借りになって、青海に臨んで釣りを垂れられたところ、どのようにされたのか、魚に釣り針を取られてしまった。命は大いに嘆かれ、あちらこちらを求め歩かれたが、魚が取って海底に入ったことなので、ついに行方は分からなかった。命はどうしようもなくて、兄の命にこのことを申し上げた。
英語訳
【Right page】
Thus Ninigi-no-mikoto descended to the land of Hyuga, made a covenant with Konohana-sakuya-hime, daughter of the mountain deity Oyamatsumi, and bore many children. After 310,000 years had passed, he handed over the country to Hikohohodemi-no-mikoto and returned to heaven. Honosusori-no-mikoto, son of Hikohohodemi-no-mikoto, was displeased that his younger brother's command had surpassed his own rank, so their relationship was always poor, and he thought to somehow destroy his younger brother's command.
【Left page】
The younger brother's command did not know at all that his elder brother's heart was thus disposed. One time, he borrowed the golden fishing hook that his elder brother treasured, went to the blue sea to fish, but somehow the fish took his fishing hook. The prince grieved greatly and searched here and there, but since the fish had taken it to the bottom of the sea, he could never find it. Having no other choice, the prince reported this matter to his elder brother.