翻刻
事有之由にて主人美作守より先刻より呼に来るの間急に出仕す心
静に披見して加判可仕一両日中又可有持参と申て罷出候其後一度
何も来り候へ共対面不仕右之通一事も無虚言由申上る伊豆守問別
木云只今源右衛門申所虚か実かと被尋庄左衞門申は源右衞門申所
少も無相違次に巻物に大勢の名をしるしたるはかれを同類に可仕
判形可取術也全く同類には無之源右衞門判形は不仕候共当世を乱
るへき術の根元を申たるは源右衞門にて候へは是徒党の張本人也
と申上る源右衛門云は其術を語たるは彼等か謀を承らさる己前の
儀也全く同心にて申たるにはあらすと申上る豊後守宣ふは源右衞
門か申所少も不偽始終其詞に無相違神妙也但し彼等に同心なくは
何そ早速右之趣を主人へ告さるや隠密仕は同心にひとし但訴人と
取にや如此は訴人にあらす忠節の人なりたとへ同心なしといへ
共委細徒党を聞なから押かくしていはさるは尤同罪也其上汝は学
者也是程の理に逆ふへき者にあらす汝か心に尋て其あやまりを可
知也源右衛門雌伏して不出詞
一山本兵部召出伊豆守のたまふは其方は今度別木庄左衞門等の徒党
の同類なるや兵部申ぬに其企を不存候或時庄左衞門戸右衞門与左
衞門三人某長屋へ来り案内仕候折節傍輩共饗応仕故玄関へ出向対
面仕時に封印の押候巻物一巻懐中ゟ出し此書を見て可致判形之由
申候某申は何事そやと問候へは庄左衞門云其意趣委細に此内に在
りと申に付見給ふ通り客を受たり早速披見難叶重て持参可有之と
て返す別木云然らは差置て帰へく心静に披見可有とて是を渡す依