翻刻
【右丁上段】
柳堤(りうでい)は補【▢囲み】堤(つゝみ)に柳(やなぎ)を植(うへ)たるを云
○閘(かう)は水門(すいもん)なり俗(ぞく)にこれを
樋(ひ)の口(くち)といふ田(た)に水(みず)を入るとき
は引(ひき)あげ入ざるときはおろす
○堰(いせき)は蛇篭(じやかご)に石(いし)をいれて水(みづ)を
ふさくものなり又 埭(たい)とも書也
水辺(すいへん)に田地(でんち)又は屋敷(やしき)あれば堰(いせき)
をするなり補【▢囲み】俵(たわら)に土砂(どしや)を入て水(みつ)
ふせぎともするなり
○水柵(すいさく)は竹木(ちくほく)をあんでこれをつ
くる水よけなりうたにも
山川に風のかけたるしがらみは
なかれもあへぬもみち成けり
とよめるなりしからみといふは
水柵(すいさく)なり
○関(せき)はゆきゝのうたかわし
き人をとゞめたゞす所(ところ)なり
【左丁上段】
風破(ふは)の関(せき)鈴鹿関(すゞかのせき)逢坂関(あふさかのせき)
これを天下(てんか)の三 関(せき)といふ今は
たへてなし箱根(はこね)の関(せき)といふ
あり其外(そのほか)関所(せきしよ)あり
補【▢囲み】峠(とうげ)は山坂(やまさか)をのぼりおはりて
いたゞきの所をいふあるひは山中(やまなか)
の峠(とうげ)鈴鹿(すゞか)の峠(とうけ)なといふ山道(やまみち)の
往来(わうらい)には峠(とうげ)をいくつもこゆる事
なり
補【▢囲み】森(もり)は木(き)の多(おほ)く生(はへ)しげりた
る所をいふ狐(きつね)の森(もり)蛍(ほたる)のもり
又 鷺(さぎ)の森(もり)などいふ所あり
○牧(まき)は六 畜(ちく)をやしなふ所を
いふ又《振り仮名:郊外|□□ぐはい》を牧といふ言(いふこゝろ)は六
畜(ちく)をはなち牧(まき)すべき所なり
国(くに)の守護(しゆご)を牧(ぼく)といふも民(たみ)
をやしなふの義(き)にとる
【□□は「かう」。別本参照】
【右丁下段挿絵】
水柵(すいさく)
《割書:しがら| み》
閘(かう)
《割書:ひのく| ち》
堤(てい)
《割書:つゝ| み》 椻(ゑん)【堰】
《割書:ゐせき|》
【左丁下段挿絵】
《割書:補》
森(しん)
《割書:もり|》
関(くはん)
《割書:せき|》
《割書:補》
峠
《割書:とう| げ》
現代語訳
【右丁上段】
柳堤(りゅうてい)は【補】堤に柳を植えたものをいう。
○閘(こう)は水門である。俗にこれを樋の口という。田に水を入れるときは引き上げ、入れないときは下ろす。
○堰(いせき)は蛇籠に石を入れて水を塞ぐものである。また埭(たい)とも書く。水辺に田地または屋敷があれば堰をするのである。【補】俵に土砂を入れて水防ぎとすることもある。
○水柵(すいさく)は竹木を編んでこれを作る水よけである。歌にも「山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり」と詠まれている。しがらみというのは水柵のことである。
○関(せき)は往来の怪しい人を留めて調べる所である。
【左丁上段】
不破の関、鈴鹿関、逢坂関、これを天下の三関という。今は全くなくなった。箱根の関というのがある。その外に関所がある。
【補】峠(とうげ)は山坂を登り終わって頂上の所をいう。あるいは山中の峠、鈴鹿の峠などという。山道の往来には峠をいくつも越えることになる。
【補】森(もり)は木が多く生い茂った所をいう。狐の森、蛍の森、また鷺の森などという所がある。
○牧(まき)は六畜を養う所をいう。また郊外を牧という。言う心は六畜を放し飼いすべき所である。国の守護を牧(ぼく)というのも民を養うの義によるものである。
【挿絵部分】
水柵(すいさく)・しがらみ、閘(こう)・ひのくち、堤(てい)・つつみ、堰(えん)・いせき
森(しん)・もり、関(かん)・せき、峠・とうげ