徳島県立図書館所蔵資料を翻刻

コレクション: コレクション1

近頃古狸珍説 礼義智信 - 翻刻

近頃古狸珍説 礼義智信 - ページ 63

ページ: 63

翻刻

戦ひける院元はすこぶる年を経(へ)し 智謀(ちぼう)の狸ゆへ手勢三ツとなし二手は 左右の土手下(とてした)に伏置(ふせおき)其身は五六十の 眷属(けんぞく)を引て責戦ふ役右衛門方は大 軍なりければ事ともせず追立る院 元は偽(いつ)り負(まけ)て敗走(はいそう)す役右衛門は勝(かつ)に乗(のつ) て追かけしに忽(たちま)ち左右の土手下より 木石(ぼくせき)を投(なげ)かけ〳〵百計りの狸顕はれ 出たりすはこそ敵の謀(はかり)事に落入たり 引や〳〵と下知するにぞ先に敗(はい)せし 院元取て返し三方より石にて打 立ければ役右衛門が勢は天窓(あたま)を打れ 脊骨(せぼね)を砕(くだけ)き我一に逃(にげ)んとすれば 味方が邪魔になり同志喰(どしぐい)に喰 合もあり又は足手を損(そん)ずるもありて 大 敗軍(はいぐん)になりにけり此時役右衛門は 味方敗軍するを見て大ひにいかり みづから追来る敵を防(ふせ)ぎ目(め)に余る