翻刻
斯て双方(そうはう)互(たが)ひに入乱れ一足も引じ
と喰合けるが作右衛門は聞ゆる勇将なれば
只一疋敵中へ馳入〳〵噛殺(はみころ)し勇をは
震ふて戦ひけり金(きん)の鶏斯と見るより
馳来り名乗かけ喰合しが作右衛門は
大狸也然も強力なれば難(なん)なく
金の鶏を喰倒し猶も敵中へ
馳入ける禁長是を見て小鷹は
居ぬか熊鷹は何国にある早く
参りて親(おや)の敵作右衛門を討とれよと
呼(よは)はる声を聞と早小鷹はいつさんに
馳来り作右衛門を目がけ名乗けるはヤア
〳〵作右衛門逃る事なかれなんしが為
に殺されし藤樹寺鷹が伜
小鷹熊鷹也尋常に勝負せよ
と申ければ作右衛門あざ笑ひ汝(なんじ)等如
きの小狸に逃(にげ)る様な作右衛門ならず
己(おのれ)が親の鷹さへも一 噛(かみ)になし