翻刻
たる某なるぞ近寄て二ツとなき
命を失ふ事なかれと言さま小
鷹にとびかゝる小鷹は得たりと引
はづし双方聞ゆる剛力なれば
上(うえ)へなり下になり組(くん)づ転(ころ)んづ
喰(くい)ひあふ作右衛門は年経し古(ふる)狸也
こなたは血気の狸なるうへ親の敵
を討んと思ふ一心こつたる事なれば
いつ果(はつ)べきとも見へざりけり熊
鷹は最前より作右衛門の後へ廻り
透を見て飛かゝり後足(うしろあし)を引
くわへ力に任せて引ずりけれは作
右衛門大ひに怒(いか)り後へむかんとする
所を小鷹すかさず飛込で首(くび)
筋へ喰付一ふり二たふり振ければ
さしもの作右衛門大ひに弱(よは)り無念
〳〵と白歯をむき吼(ほへ)うなるを兄弟
得たり乗かゝり手足(てあし)肩(かた)尻(しり)嫌(きら)