徳島県立図書館所蔵資料を翻刻

コレクション: コレクション1

近頃古狸珍説 礼義智信 - 翻刻

近頃古狸珍説 礼義智信 - ページ 72

ページ: 72

翻刻

なりむかし南朝(なんちう)の時湊川(みなとかは)にて 楠木正成が討(うち)死せしも斯あらんと 多くの狸皆 感涙(かんるい)を催ふしける 扨も禁長は小鷹を招きて申けるは 足下日比 恨(うら)みし敵作右衛門討とり 本望たるべし然るに我足下に 申置事あり今味方勝色なりと いへども多く討死し残るは纔百 に足ぬ勢也敵弐百に余る勢な れば後〳〵の合戦覚束なし是に よつて汝は此戦ひを止まりて命を 全ふし此山の絶頂に登り我〳〵が 軍を見物して討死をするならば 某が死骸(しかい)を人の見ぬ所(ところ)へ隠し 埋め此通りを日開野大和様へ注進 し二代の禁長となり大和様の 屋敷(やしき)を守(まも)り我〳〵が亡跡(なきあと)を弔(とむら) ひ下さらは是に増さる忠義はなし