翻刻
〳〵しやといふより早く八兵衛に飛
懸り八兵衛 冷笑(あさわら)ひ女のいらざる腕立(うでたて)
也と言ふざま一往一来馳違ひ上(うへ)に成り
下になり喰合しがお山は数刻の戦
ひに身心 労(つか)れたちろく所を八兵衛
得たりと付入〳〵難なくお山を
取ておさへ首 筋(すじ)したゝか喰付 力(ちから)に
任せてふりしゆへさすがのお山も労(つかれ)
はて終に八兵衛の為に殺されけり
斯(かく)と見るより高須院元大ひにいかり
白 歯(は)をむきて懸(かけ)来り八兵衛のうし
ろより物をもいわず喰付たり八兵衛
は心得たりと振り返り互に透(すき)を見て
喰合しが双方聞ゆる猛狸なれば
一寸も引じと戦ひしが院元は難(なん)
なく八兵衛取ておさへ既(すで)に止(とゝ)めをさゝ
んと咽(のど)笛へ喰付し所八兵衛の手下
七八疋馳来り院元の後(うしろ)足をくわへ