翻刻
て引倒す院元大ひに怒(いか)り振り返り
又四五疋を只一歯に喰殺し八兵衛
目がけ懸寄る所何国ともなく大石
飛来り院元か眉見にあたりこ殊(こと)の外
やふれしゆへ血(ち)流て両 眼(かん)に入働 く(く)
事能ず引返さんとする所八兵衛の手
下雨あられの如く小石を打かけしかば
憐むべし院元は石にて急所を討(う)
たれ是も同(おな)しく死失(しにうせ)たり八兵衛は
味方の助けにてよお〳〵命を助かり
起(おき)上りしが最前の疵痛み強く
一足も歩行(あゆむ)事 能(あた)わず終に其 侭(まゝ)倒(たを)
れける手下の者 等(ら)大ひに歎(なげ)き死骸を
あたりへ葬りける爰に衛門三郎は九左衛門
を相手にして追つか帰へしつ戦ひ
しが勇将の院元おやまら討死せ
しかば大ひに力(ちから)を落しさらば
我も討死(うちじに)して名を後世に残(のこ)さん