翻刻
未だ百計の勢あり何卒爰をのが
れて穴観音へ帰り六右衛門と一所に敵
を防(ふせ)かんと思案(しあん)し味方をはげまし
戦ふたり衛門方は皆討死と極めた
れば少しも猶予の気色なく敵(てき)
陣へ飛込〳〵大将士卒のきらいなく
かみ伏くい伏あれ廻る中にも衛門三郎
は年経る狸なれば飛鳥の如く馳廻り
かみ殺し是か為に命を落す者
何疋いふ数を知らず今は敵方にも
討死し或は落行残るは大将九左衛門
一人なり衛門三郎大ひに悦びかけ
ゆけば九左衛門大ひに驚き松原さして
逃行を衛門三郎追かけながら大音に
呼ばりければ九左衛門も此言葉にや恥た
りけん取て帰し衛門三郎に飛懸
る心得たりと白眼あひ双方透を見
合けるが衛門三郎は勝浦尋にて一二を