翻刻
申ける田の浦太左衛門が曰く六右衛門 汝いか程
隠(かく)るゝとも最早斯取巻し上は逃(のが)
れぬ所也なま中逃れんとして死(しに)
恥を見せんより心能勝負せよ斯(かく)
言ふ我は南方の押へたる田浦太左衛門
也と声(こへ〳〵)に呼わりけるにぞ六右衛門も今は
叶わぬ所と覚悟を究 彼(かの)太大刀(おふだち)
を抜(ぬき)もちて打てかゝる金禁長得たりと
懸向ひ抜ツ潜(くら)りつ秘術を尽(つく)し
戦ひけるが子鹿子は六右衛門の後へ廻り
透を見て飛込六右衛門か足をくわへ
て引倒 (たを)せば禁長 透(すか)さず立懸るを
六右衛門 転(ころ)ひながら太刀取のべて禁長
か肩先(かたさき)三寸ばかり切 込(こみ)ければ禁長大
驚きたじろく所を太左衛門かけより
禁長をかこふていいどみける子鷹は其侭
飛しざり六右衛門に組付たり其ひまに
禁長は■(おど)り上て大石をなげ付ければ