翻刻
浅草(あさくさ)の漉返(すきかへ)し
わたくしはおの〳〵様の
まへへむさくろしく
出ますもいかゞなれ
ども御めんなされませ
まつわたくしがつかはれ
ますはとかくむさい事ばかり
それをのがれましてやれ
うれしやとぞんじました
ところがうちだやのたば
こみせへかはれまして
わづか一きんで八十か百の
たばこをつゝまれたる
おはしたに
かはれ女べやのすみ
になげほうられまして
ゐましたがそばで
おはぐろをつけて
ゐてほう〴〵をたづね
てもなかつたがいんぐわまあ
【挿絵内】
ほんの
なで
つけ
さ
【右頁上段の続き】
そんざいな
わたくしを
ひつぱぎ
たばこはふき
とぶにもかまはず
まつくろな
くちをみへも
せぬひんほうな
かゞみをはなの
ひつつくほど
つらへおしつけ
さつまいもほど
あるゆびへ
わたくしを
ひんまき
大くちあいて
ふかれまして
かごの
なかへ
ほうりこまれて
こゝへ
まいりました
【挿絵内】
はやく
しまひ
なすつたの
現代語訳
浅草の漉き返し紙が言うには:
「私は皆々様の前へ汚らしく出ますのもいかがなものかと存じますが、お許しください。まず私が使われますのは、とかく汚い事ばかりで、それを逃れまして、やれ嬉しやと存じましたところが、内田屋の煙草店へ売られまして、わずか一斤で八十か百の煙草を包まれた後、下働きの女に買われ、女部屋の隅に投げ放られましておりましたが、そばでお歯黒をつけていて、頬紅を探してもなかったが、因果まあ、そんな私をひっぱって、煙草は吹き飛ぶにも構わず、真っ黒な口も見えもしない品のない鏡を鼻がひっつくほど顔へ押し付け、薩摩芋ほどある指へ私をぐるぐる巻いて、大口開いて吹かれまして、籠の中へ放り込まれて、ここへ参りました。
【挿絵内】
早く
仕舞い
なさったの
」
英語訳
The recycled paper from Asakusa says:
"I appear before you all in such a dirty state, which I find quite improper, but please forgive me. First, I am always used for dirty tasks, and when I escaped from that, thinking 'Oh how delightful,' I was sold to Uchidaya tobacco shop, where after being used to wrap eighty or a hundred cigarettes for just one kin, I was bought by a servant woman and thrown into the corner of the women's quarters. While she was applying tooth-blackening nearby, she looked for rouge but couldn't find any. What karma! She grabbed me, not caring that the tobacco blew away, pressed an unsightly mirror so close to her face that her nose touched it, showing her blackened mouth, wrapped me around her finger thick as a sweet potato, opened her big mouth and puffed, then threw me into a basket, and that's how I came here.
[In the illustration]
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"