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【雨の如くに射かくる矢】
馬(むま)一 疋(ひき)拝借(はいしやく)仕たしと大 音声(おんせう)
にて申ければ将頼(まさより)やがて乗(のり)がへ
一 疋(ひき)川中(かはなか)へ追入(おいいれ)させければこなた
のきしにて着(つき)たりける玄茂(はるもち)
喜(よろこ)び打のりてやす〳〵と川を
越(こ)し互(たかい)に無事(ぶじ)をよろこびける
かゝる処(ところ)に秀郷(ひてさと)の男(なん)千晴(ちはる)
二千 余騎(よき)を引卒(いんそつ)し
もみにもんで追来(おゝいきた)る将(まさ)
頼(より)一人 引(ひき)かへし千晴(ちはる)を
目(め)かけ組(くま)んずものと從(ぢう)【縦】
横(をう)無盡(むじん)に切(きり)まくりかけ
ぬけて味方(みかた)をみれば
玄茂(はるもち)を始(はしめ)として
八十 余(よ)人 討(うた)れたり
今(いま)は是(これ)までと物(もの)
現代語訳
【雨のように射かけられる矢】
「馬を一匹拝借いたしたい」と大声で申し上げると、将頼はすぐに乗り換え用の馬一匹を川中へ追い入れさせた。こちらの岸に着くと、玄茂は喜んで飛び乗り、安々と川を渡り、互いに無事を喜び合った。
そうしているところに、秀郷の男(息子)千晴が二千余騎を率い、もみ合いながら追いかけてきた。将頼は一人引き返し、千晴を狙って組み討ちしようと、縦横無尽に切りまくって駆け抜け、味方を見ると、玄茂をはじめとして八十余人が討たれていた。「今はこれまで」と思い...