翻刻
考へし|醫(い)を|業(ごう)とするものは五運六気の|大過(たいくわ)|不及(ふきう)を考て
其|治(ち)を|施(ほどこさ)は其|運気(うんき)に|應(おう)ずる病は|速(すみやか)に|愈󠄀(いや)へし是以て天
の|時(とき)と|地(ち)の|利(り)によりて土の生殺吉凶を|辨(べん)じて|五穀(ここく)の豊凶を
知る也且亦風雨の|難(なん)をはかりて|耕作(こうさく)をなさは其|徳(とく)|大(おほい)なり
又|順気(しゆんき)|不順気(ふじゆんき)を知へし|不順(ふじゆん)の天気といふは天地四時の
|気候(きこう)に|違(たがい)たることなり|醫書(いしよ)には四時|不正(ふしやう)の気といへり
|併(しかし)四時のみにあらず其百〳〵に正不正あり|養生(やうじやう)の者是を
|考(かうがへ)て|身(み)を|守(まもら)は天年を|終(をは)るへし|抑(そも〳〵)|前(まへ)にもいふごとく天には
時あり地には利あり天の時と地の利を|考(かうかへ)て|五穀(ごこく)を|生(しやう)じ
|桑(くわ)|麻(あさ)をうへ|鶏(にはとり)|鳴(ない)て|起(おき)|孳ゝ(し〳〵)として|勤(つと)め|織(をり)て|着(き)|耕(たかや)して
|食(くら)ひ|士農工商(しのうこうしやう)共に|孝弟(こうてい)|仁義(じんき)の|道(みち)を行ふ時は|国家(こくか)も
|豊(ゆたか)にして|共(とも)に|歓楽(くはんらく)ならん
夫晴雨水|旱(かん)|荒(こう)|豊(ほう)|流行(りうこう)の|病患(ひやうくはん)を考る事は|元(もと)|天(てん)|文(もん)|家(か)
の事のみにあらず|辱(かたしけなく)も|醫(い)の|元祖(くはんそ)|黄帝(こうてい)|内経(だいきやう)に|詳(つまひらか)なり
内経に五|星(せい)五|運(うん)の|應(おう)は人の五|臓(ざう)を|傷(やぶる)と云〻又五|星(せい)|儀(きに)|曰(いはく)
|熒(けい)|惑(こく)|星(せい)は|方(はう)にては南方|四季(しき)にては|夏(なつ)五|行(きやう)にては火なり
五|常(じやう)にては|禮(れい)なり五|事(じ)にては|視(みる)なり国君此五事|正(たヾ)しき
ときは五行の|祥地(しようち)に|應(おう)して|国冨(くにとみ)|民豊(たみゆたか)也人〻心を正して
|身(み)の|奢侈(おごり)を|止(やめ)て|其(その)|行(おこない)を正すべし
凡晴雨豊凶|疾病(しつへい)を考には先其国其所の|平常(へいせい)|行(おこなは)るゝ