翻刻
なれは御支配御代官所へ御見分ねかひ奉りしとや
其比山ノ湯に而湯あみける人々珍らしき事とて帰り
さに立寄り見るに目を驚す事共也夫より日増
に強く成りて昼もけふりの内にもへあかる火の影
見へて夜るは尚吹揚る火の玉五六尺あまりもありやと
思ふに四方へ飛ちり花火の玉をあけぬるに異
ならす其音天地に響き震動しいと〳〵おそろ
しき有さま也只事にあらしとて草津山の湯の
温泉に居る人々も皆々逃帰りける其比当時へは
けふり深くして見へさりしか信州上田善光寺たいら
にて見れは吹上る火のかけおとろ〳〵しきさまなり
七月初ゟ猶もやけ上り大地も動き家も今や崩
るゝ斗にて戸障子は隙なく鳴渡り又は打返り黒
焼りは常に北うらへ吹かへし碓水郡辺は日毎にし
曇ひの如くにて灰の降事度々也むかしゟとも
すれは五七日十日あまりやけける事はあれと幾月
もやけつゞきし事はなけれはみな人いとあやしみ
おもふ折から七月五日に至りて中仙道松井田辺
安中あたり迄灰に小砂交りて降ける六日には夕立雲
の風に吹ちるか如く黒煙地をとび未のこくはか
りゟ雨はふらすして雷悉鳴渡り雷光目を驚
す斗にて夜に入て又砂の降事弐三寸もあり
なん