みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE1

浅間焼見聞實記 - 翻刻

浅間焼見聞實記 - ページ 11

ページ: 11

翻刻

と見ゆ夜は明ぬれと物のあやめもわかざれは家毎 にともし火をかゝげさり難き事ありて出にし人も 道別り兼ぬれば皆挑灯を持行むまや路の旅 人もみな軽井沢ゟ高崎辺迄の宿々に宿を求め 泊りける昼の程は砂も降やみぬれと申の刻斗りゟ 又降出し浅間やま焼音のみならす雷鳴渡り 天地は震動して稲光りは百千の剣を投るか ごとしあな恐ろしや女童のなきさけふも 断なりあゝいかなる時節至来にやありけると ひと〳〵十方に暮てぞ居たりける一ノ宮辺まては 六日にもふらすしてひとへに神徳なりと社人 たんせいをぬきんでゝ祈念奉りしとぞ七日にも朝 の間は西南は晴けれとも北は黒煙りにてけわし き空也又北にて雷の音聞へけれは其日は麻もほ さず申の刻にいたりて灰に交り砂少づゝふりける を珍ら敷物とて人の元へもて行見せけるも 有りいとけなき童へ抔はよろこひ拾ひ寄 もてあそびけるも有り夫より次第に雷の鳴音 近く成り浅間焼音は猶もいやまし大地も崩 るゝはかり成ければ人々おとろき野山ゟ立帰 りける日暮方には西はいと克晴ぬれば夕日かけや け煙りに移り其さま写し絵も及ざる風情也