翻刻
かるい沢辺にては四日五日の比ゟはいきたる心地はなかりし
かとも流石に家をすて逃しりそくものもなかりしに
七日の夜に至りては火の玉のやうに見へて降しゆへ
三宿ともに小田井岩村田志賀内山辺へ逃しりそぐ
中にも軽井沢は大きなるやけ石ふりけれはひと〳〵
どうてんして逃出し家々にて食盛女数多有りて
十人弐拾人つゝ引分れさるやうにと言付出しけれとも
原へ出けれは我先にと飛行しゆへみなちり〳〵に
なり逃行けるやけ明りにて昼のことくなれは方角
はわかりぬれと原道にて行方をうしなひ泣さけ
ふも有りしやくなとおこりたふれしも有哀成り
けるありさま也ことにやけ石火のことくふりぬれは皆人
なべかまめしびつ桶ふとんたゝみなど手にあたるを
さいわひうちかふりやうやう上州はつどやの里迄
逃去り宿をこひ止宿していたりくつかけ追分
は砂もふらされは一日二日過ぬれは立帰りぬかる井
沢こそ砂にてたふれし家々?【墨滲み】あまたあり又火も
けさすして逃しあとにてもえつきしや
火事となりて家数三拾軒余やけうせける又
ふりし火石よりもえつきし哉しかれとも砂にう
づもれ居りしゆへ類焼もすくなくして仕合せ又うす
ひ峠はすなのふりし事三四尺あまりもあれは道も