翻刻
通ひ馴たる道にしあれハはや弐三里も行けるか茂
木金助といへる同役かたへにかゝまりて小便をなす内はや
壱人ハ壱丁も先へ出し也是ハ今井小源治といへる人なり
程無跡ゟ来るへしと道の程十町も行過跡ふり返り
ミれハ金助来るべくもあらねば暫く立やすらひ是
を待に金助ハいかゝしたりけん堀の中へこけ込水はなけれ
ど石砂こけきたり手懸り足掛りもなく中々に出ぬ
へき便りなく其身ハ砂にうつめられせんすべなくつれ
を呼ひけれ共十町余りも隔りし事成れハかつて
きこへす〇小源治後に一ノ宮京屋傅左衛門と云〇後にハ聲
もかれ果ぬ先なるハ是を知らされバはや来るらんと一ツ時
あまりも待といへとも更におもかげも見へず殊に御文箱も
金助が持居たる事成れバ先へも行兼立戻り見るに
何国へか行けんさらに見へされバこハ御用を難義に思ひ欠
おちやしたりけんと思ふ折から聲を限りに呼ひけれハ遥
跡にて返事なす聲かすかに聞ヘ其に行ミれバ
金助ハ更に見ヘす能々爰彼こを見廻るに傍へなるく
ぼき所にて砂にうつめられ頭斗り出して居たりいかなれハ
斯ハ成給ふと聞けれバ先ハ引あり呉よといふ其所に行
手を取引揚んとセしか足に力を入れしにや上なる砂
こけ落同し堀の中へ共に落入ぬ弐人共にこハ何となす
へきと十方に暮て居たりしか一人のかたに取付帯に