翻刻
足を踏かけやうやく上に揚り帯をとき此はしつかた
をもたセ又落さるやうに道の中程にありて是を引に
此帯黒ハ丈のやうかん色に成りしか中ゟふつと切て又
落こミセん方なく二人の帯をもて二筋になして是
を便りに漸ひきあけし内彼是一時半もときを移し
けれバ漸|夜(よ)に入て本庄の宿に至りけるがいよ〳〵浅間
泥押の様子聞つゝうろたへ騒くはかりなり弐人も夜食
さへたべねば何かな求めはやと思ふに中々もとむる事
かたしやうやく餅少しもとめつゝ是をたへ急き行侭
に熊谷の土手に懸り腹もすきぬれバ漸鴨の巣 【←鴻の巣の誤記?】
の宿に至りぬ夫ゟ次第に砂も少なけれバ道もはかゆ
き九日のくれ方に江戸御城半蔵御門外前田の
御屋敷につきしとなり
近年ハ諸國共に陽気柄能諸穀共にいと下直に
て有りしか過し寅年上つかた美濃尾張伊勢中
國不作にして取わけ四国ハ田作壱弐歩是作も同しく
不作成ハなへて困窮に及ひ木の実草の根を堀
てたへつゝ露の命をつなきける由夫ゟ米も
高直成し北ノ国々出羽奥州南部津軽辺天気
あしく寒さはやくきたりにし故田方實のらす
右の国々田方のみにて外作なけれバ餓死の人々多
かりしとや卯年ハ美濃尾張五畿内中国九州迠