翻刻
間やけのよし見きゝかへりしとや尾州名古屋ゟも小田井
迄見とゞけ来りしと也此 節(セツ)川〳〵にて魚こと〳〵く
死しながれけれど毒ある無と食しける人無し
其比宇田村神守寺弟子に充賢といへる僧有り後に小
坂村延命寺に住職しける此僧七月七日の夜土塩村乾
窓寺といへる寺に用事有りて行一宿しける其夜砂
ふり八日の朝なれどよるのことくにしてあれば火をとし
侍らんとくりと本堂の間ろうかあり此所へあんとう取にゆ
きぬれは折しも此屋根へ雷落かゝり打つふしぬれ
は双方の大屋根ゟふりつもりし石砂こけ落い
と深くうづみけるに仏神の加護にてやありけん大
きなるむな木横たはり其下へ此僧たふれふじきたれ
ばけがもなくして人をよび声(こひ)のかきりさけべとも
中〳〵きこゆべくもあらす雷少しなりやみてのちきやく
僧いさりしとて尋けれども見へされはこゝかしこ見
廻りけるにろうか打つぶしぬ大かた此所にもいたりけん
とてほり出し見れはかの僧ひなぎの下にふしいたりし
がはら斗り白き所ありてからたまつくろになりてふし
たりしたなる板敷このことくになりしとかや其後
此僧のかたりしを聞てしるし侍りぬ
また此寺の近き所にて家つぶれ亭主しんしはりとや
らおちて顔を打くたき即死するなりかやふきの家はよけれ