翻刻
松平薩摩守殿中屋敷等なへて焼る又松平肥後守殿
御持場内海二の御台場焼しと也そはおきて八代洲
河岸の方へゆくに遠藤但馬守殿同続常備消役
御屋敷又松平相模守殿上下二屋敷本多中務大輔殿
永井遠江守殿屋敷等焼る馬場先御門左右石垣いたく
頽(クヅ)るこゝより家路をさす道すがら見るに龍の口阿部
伊勢守殿第宅潰れ築地倒る伝奏御屋敷御評定所
潰れ築地は御堀端へ倒れて小路いと狭く地(ツチ)又
裂たり終に呉服橋御門より家に帰りぬ市中の人〻は
再なゐふりあらん事を恐れかつは火を避ん
とて大路小路に資財家具など持出つゝ筵敷
戸障子など囲ひて宿りをり互に明るを待てり
今夜さいはひに風しづかにして暁(アケ)る頃ほひ
よもやまの火なべてしつまりぬ此勝事江戸おし
なべての事なれば《ルビ:うがらやがら|親族》も扶け来らず
ちかしき人たちもさらに訪らはず明れば三日
天晴(ソラハル)《ルビ:たれ|誰》は家に帰らす《ルビ:かれ|彼》は梁に敷かれて死たり
又軒に打れて命絶になり瓦にあたりて傷(キズ)つき