翻刻
吾地主深川永代町栖原三九郎《ルビ:がか|許》へ訪ふ家は
ゆかみ頽(クヅ)れて人〻は例の小路にむしろ敷てをるに
しばしがほどはあきれてものもえいはずやがて
あつじだつ人に誰かれの安否を訪ふに疵つき煩ふ
ものもなきよし《ルビ:いらふ|答》さて吾あづかる所の家〻の
ありさまを物語りてかくてはいかで《ルビ:あめかせ|雨風》を
しのくべきよろしくめぐみ給へと申せとも地主も
小路のだゝずまひなればしひても申がたくて又の日
猶うかゞひまうすへきよしをのへて帰りぬ
其道すがら小網町を過るに北新堀町より小網町の
あはひところ〳〵地裂けたる所ありきこゝらの
なゐぶりのさまを心にいたみつゝ家につきぬ職人の
料銭あきものゝ価ひ高うすまじきよしを
《ルビ:お|公》ほやけより令せらるされともなへての職人ともは
金壱分又は弐分受とりあきものは篷筵縄草鞋に
至るまでよのつねの価の一か二分ンを増し《割書:故 に 今 月|十六日十七日の》
《割書:間市中の材木屋荒物屋職人其外家造|普請等に携る者共多く町奉行所へ召捕はる》金壱両に六貫六百銭
なりしも忽ち六貫五百銭になる《割書:銭相場高うすまじきよし|公より両替や共へたゞちに》