みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE9

やぶれ窓の記 全 - 翻刻

やぶれ窓の記 全 - ページ 19

ページ: 19

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わたりつゝ右り手へゆくに迦久土(カグツチ)【火神】の神のあらびに かゝりて相川町より富ケ丘の八幡境内のきは まて左右の町〻残りなく又此南北の裏町〻も 多く焼て漠〻たる曠原のこと〳〵焼るかの 境内のきはにすこしく焼残りし町家は強く ゆり潰れて恰も簓(サヽラ)を乱したるが如しそこより 汐見橋をわたり吉祥寺弁財天女の祠へいたるに なゐにも波にもいたくゆられぬに歟つゝがなし こゝより江島橋をわたりて木場へ出つ塹(ホリ)に ちかきこゝらの小路|土裂(ツチサケ)たる所いくらもあり 扇町より吉永町東西の平野町へ出づ此あたり 家〻ゆり潰れしに材木などやがうへに算? ̄ンを 乱して人〻の《ルビ:ゆきかひ|往来》をうしなふ此あたり 伊勢崎町の辺りも焼しと聞けどゆかず《ルビ:たゞ|直》ちに 浄心寺霊岸寺門前より高橋をわたり本所常 盤町の火地を見てゆく〳〵森下町の焼土を踏つゝ 弥勒寺橋をわたりて右りへ閑月庵如萍を訪ふに 互に事なきを歓ふそこを出て三ツ目通りへ 【上段】 覚(サムル)云 三十三間堂は先(アト) 後(サキ)曲(ヒヅミ)て中程より 先 ̄キのかた十間計り 甚(イタ)く倒れたるは 仏力ありてふ観世 音の安置(アンチ)もならで 千の御手(ミテ)にも引 止めがたく矢(ヤ) 浄心寺の門前 いたくゆりつぶれ 霊岸寺の門前も 倒る後に浄心寺の 境内を通りぬけしに 力士阿武松緑之助 浦風林右衛門なとの 大きなる墓碑の 倒れてありしが かゝる人の亡霊も 何さま耐(コラ)へがたくや