みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE9

やぶれ窓の記 全 - 翻刻

やぶれ窓の記 全 - ページ 21

ページ: 21

翻刻

権現又観世音の在(イマ)す堂社のほとりに染わたり たる楓葉の斜に日に映したるがいとめでたし こゝを出て三橋(ミハシ)をわたりて見やるに広小路の 東側松坂屋といへる呉服屋の角 ̄トまてなへて 焼る此中にも松坂屋は多くのぬりこめみな《ルビ:ほのほ|炎》に 成て一抹(ヒトツマミ)の塵埃も残らず江戸商人第一の損失也 と聞ふ又此裏につゞきたる町〻多く焼る下谷池の端 茅町の辺りも焼しと聞ゆれと行ずして 御成道を家路の方へさすに同所石川日向守殿 屋敷焼る此向ひなる井上某殿の屋しきはゆり 潰れてたゝに薪などちらしたるやうに見ゆ 筋違橋をわたりて吾家へ火ともし頃にかへりぬ さておもふに本所深川はなゐぶりの殊に つよかりしに歟行かふ人〻あるは車ひきもの 擔ふなる雇人等も多く身うちに疵つきて 見ゆ我をる町のほとり南は京橋芝北は神田 本郷のあたりはゆりふるひしも緩きにかかゝる 人たちも疵つきたるは少なかりきこはいつれも 【上段】 後に芝辺へ行しに 露月町芝井町 宇田川町神明町 辺は家倒れ潰れ しも少なからす 又下谷なとも坂本 箕輪の辺は是も 倒れ潰れしさま いとすさましかりし すへて同し芝の内 同し下谷の内にて 動揺の強弱あり 此外も皆しかり