翻刻
地勢のしからしむる所にてせんすべなし又神社
仏閣は富ケ丘八幡霊岸寺浄心寺本誓寺浅草寺
東叡山中堂天王寺湯島天神抔はいつれもけふ
まのあたりに見し本社本堂の平らかに立せ
給ふはげに神仏の奇特あるによれるよし
なべての人はおもふめれどさにはあらじ必す
ゆり轟けども棟梁四簷おのつから《ルビ:のり|規矩》にかなひて
釣あひよければ傾き僵(タフ)れざる理(コトハ)りあるなるべし
こゝらの中にも浅草寺天王寺などの塔の《割書:浅草寺の|塔は事故》
《割書:なくて塔上の九輪曲り傾き天王寺の塔も恙なく九輪は落又|八代洲河岸の定火消役御屋しきの火の見櫓も本は恙なく頭の揺❓》
《割書:又屋根なとは|ゆり落せしなり》事なきを見るにも極めてさる事とはしらる
そは根もなき行燈やうのものなとのかゝるをりに
ふれて倒れざるがごとくかの弥次郎兵衛とかいへる
わらはの玩ひものゝ《ルビ:すう|居》る所によく立るがごときは
皆釣あひに従ふものなりかし又数かぎりなき
橋抔のゆり頽(クヅ)れて落たるも粗見えぬは神仏
おはして橋を守り扶け給ひしなどいふべき
すじもなくて是も必頽れ落ましき理 ̄リ