翻刻
あるによれりさればとて神仏を験(シルシ)にきものと
さみしいふにはあらす聊思ふ所の義理をもて
述るものなりかし今日(ケフ)武家方の営作なべて
美麗の費を省き築地なども防禦を凌ぐ
までにしつらふへきむね命せられしかば
市中の家〻も見ざまにかゝはらず風雨(アメカゼ)を
厭ふ迄に作り営むべきむねを仰出さる一石橋の
橋台石垣なゐぶりに崩れし後猶おひ〳〵に
くつれおつるによりて今日より往来人をとゝめ
らる六日|天晴(ソラハ)るけふは家にありきのふ糯(モチヨネ)八斗を
買得て餅肆へあつらへしかはけさ搗て熨餅と
いふものにつくりてもて来(ク)とみに予かあつかる
所にをる人〻にわかちあたへ猶のこれるを近き
わたりのうがらやがら又したしき中らひへも
わかち贈る今日(ケフ)深川大島町に住るものともと歟
党をくみて近き所の破れたる土倉におし入て
米を多く奪ひとりて去りしかば其ものともの中(ウチ)
捕らはれて呉服橋御門の内なる町奉行所《割書:井戸|対馬守殿》へ