みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE9

やぶれ窓の記 全 - 翻刻

やぶれ窓の記 全 - ページ 32

ページ: 32

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 荒たるさまのあからさまにていと〳〵すさまし  行〻水道橋をわたりつゝ水府公のみあたりを  窺ふに御館を初めて御築地に至るまでつよく  ゆりふるひしさまいふべくもあらずこゝに前中納言  斉昭卿の羽翼の良臣前年寄海防掛り藤田  誠之進《割書:元虎之輔なりしかと戸田忠太夫と対して誠之進と|改名せらる所謂誠忠の二字を以羽翼とせさせ給ふ御心そへ也》戸田  忠太夫此両士は文武の達者にて世に普く聞えたる  人たち也殊に誠之進は博識多才にて此度の変事の  十日ばかり前とか文武の司を命せられしを  なゐぶりの夜両士ともおのか宿所にありて共に  此難 ̄ンにあひ身まかりしと聞ゆ此に歎息をしのひて  百間御長屋の前を過つゝ江戸川の北へらを行に  龍慶橋の上之中の橋より石切橋のあはひあるは  一|條(スヂ)あるは二條にいたく地の裂しあと長〻とみゆ  小日向の荒木坂に酒商ふ家の松本屋忠右衛門と  いへるは吾親属なれは訪んとするに家衰へて先 ̄キつ年  あとなくなりぬと聞くに本意なく  小石川伝通院前通りより富坂を越えて本郷の 【上段】 覚(サムル)曰神仏の擁?護 福善禍淫なといへるは 共に勧懲の説にして 論するにたらす誠 忠の両士は君に忠 あるのみにあらす 親に孝あり既に 其夜地震動揺の をりからは父母を 扶(タスケ)んとしてかゝる 災(ワサハイ)に遇と聞く嘗(カツ)て 天命は是歟非歟と いへりし古人の金言 うべなるかな惜む べく且歎すべし