翻刻
癖あるによれる也けり日もやゝ西に傾きしかは
道をいそぎて家に帰りぬ今夜雨降て人〻の
窮迫やう〳〵緩まんとす水府公 御守殿なゐ
ふりに損ひしかは 線姫君様御逗留の為明日
御本丸へ入らせられ給ふよし其御道筋へ觸示さる
十二日|天晴(ソラハ)る《ルビ:つとめ|早朝》て竹こ坊訪ひ来る
其故は今度の天災に家は破れたれど身は傷られさる
歓ひにとて閑月庵に芋汁調じてけふの
翁忌弔らはんと也其厚志手を拍て感す
午の時はかりに介家甘志をいさなひて閑月庵に
まとゐす其人〻介家。流志。先紫。甘志。
立基。花海の六客なりおの〳〵祖翁の
像前に手向る句あり今度の災ひに
遭ひて子来桂雨二老の身まかりし事を
端作りに書つけて〽見し憂(ウキ)を翁につけて
祀(マツ)らずや 介家 又なゐぶりにもゆれさる庵ぬしの
真ごゝろにけふの正当とり行はるゝ
風致の根ざしいと〳〵堅固なる事を思ひてと