翻刻
端書して〽けふをたもつ下葉の露や冬の菊 花海
人〻の秀吟猶あれども吾記中の趣に
あつからねば寔(コヽ)にとらず脇起の誹諧一順又
探題の発句あり時に酉過る頃唫声《ルビ:をへ|終》て
像前に額づき帰る偖日ことに筆をとる事は
既に十日ばかりを過ぐといへども予がおほよそに
見聞するありのすさみはいまだ口隅の間 ̄タ十か
みつも尽きず且是を尽さんと欲りして
其有やうをいよ〳〵探れはとゞまる所はたゞ
煙草一吹のいとまに東武五里四方にたらさる地を
なへて残さず動揺緩急の際 ̄タに億兆の
家宝を凌礫破却せしのみにて異なるは
只火地となりし有さまと大地の形勢によりて
裂けしなどの二ツばかりなればことに
簡約してしりうこどをとゞめんとす
そも〳〵開東に地震のいたくゆりしは
元録十六年癸未十一月廿ニ日の夜半ばかりにて
新井白石先生のものせられし折焚柴の記に
【上段】
今度の地震山川
高低の間高地は
緩く低地は急也
其体青山麻布
四ツ谷本郷駒込
辺の高地は緩に
て御曲輪内小川
町小石川下谷浅
草本所深川辺
は急也其謂れ
自然の理り有
べし
覚云思ひ出る折
焚柴の夕煙む
せぶもうれし忘
れ形見にと云へる
古歌によりて
題号とせられ
しなるべし