翻刻
【上段翻刻】
二階居間などは
層楼居室とも
書くべけれどさまては
物しりめかしく
をこのわざなれば
略しつ以下また
是に倣ひて目
やすく記せり
【本文翻刻】
聞ゆをりしも二階に積たる書櫃(フバコ)又居間の架(タナ)より
雑具とも頽(クヅ)れおち壁又障子などは浪のうつ
やうに見え天井鴨居動きひしめき女どもは
たゞに消えいるはかりなりしかどほとなく
揺(ゆ)りやみしかばをちこちに人声《ルビ:さうぞき|騒動》
聞ゆ女どもゝやう〳〵心ちつきしかばやをら
老の身を起し窬戸(クヾリド)引あけてやる人〻火《ルビ:あや|危》うし
火所(ふド)に心せよとしはがれ声をあけつゝ提燈
ともして外面(ソトモ)を見やれば我あづかる所の
連屋(ナガヤ)ひと棟の廂みな崩れおちたれば《ルビ:あき|果》れ
ながら身うちに疵つきしものはなきやあまりに
《ルビ:あわ|周章》てゝ身をな害(ソコナ)ひそなどいひつゝ問ふに
人みな色をうしなひいまだ息もつぎあへねど
疵も得ぬよし皆まうす此歓ひ我身にとりて
いとかぎりなしと《ルビ:いらふ|答》又我家を見るに
壁こぼれ柱は《ルビ:ひづみ|曲》たれと住わぶるほとには
あらすさるをりから火のおこりしを知らする
半鐘のおとそここゝに聞ゆ屋のうへによぢ登りて