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【右丁】
にげし。敵に川を越(こさ)すべし。しりぞく時。大
将(しやう)の大 籏(はた)も馬印(むまじるし)も色(いろ)めきたつて。しどろな
るやうに敵に見せ。よき時分(じぶん)を見(み)。横鑓(よこやり)を入
させ惣勢(そうせい)も返(かへ)し。鼓(つゝみ)をうち押(をし)かゝり戦(たゝかふ)に。利(り)
あらずといふ事なし。冬(ふゆ)の川越(かはこえ)には。諸卒(しよそつ)
こゞへ気(き)ほひぬけ。又其まゝ敵より追(をふ)時 備(そなへ)な
どもくづすべし。夏(なつ)は是非(せひ)共 味方(みかた)より川を
押(をし)わたり戦(たゝかふ)べし。其時も川上か川下より横(よこ)
鑓(やり)の勢を引わたし。二手(ふたて)三 手(て)にわたすなり。夏(なつ)
はあつさにだらめき諸卒(しよそつ)難義(なんぎ)をしたる
【左丁】
所に。川へうち入わたる勢。一入気ほひもさは
やかに。戦に利ある事いにしへの法なり
《箱:第十九》 味方(みかた)小屋(こや)に火(ひ)を付(つくる)事
▲山陣(やまちん)にても野陣(のぢん)にても。よき時分(じぶん)をさげす
み物見(ものみ)をやり。茂(しげ)み林(はやし)又山 陰(かげ)の地(ち)を見
たて。夜半(やはん)ばかりに浮武者(うきむしや)あまた隠(かく)し置。
明(あけ)ぼのとひとしく。味方(みかた)の小屋(こや)に火(ひ)をかけ。
諸卒(しよそつ)しりぞく体(たい)に見する時。敵(てき)利(り)に乗(のり)
てきほひつゝ追(をい)かゝるに。よき地前(ちまへ)へ引うけ。
追返(をいかへ)しかけ入〳〵戦に。敵つかれたるとお