← 前のページ
ページ 106 / 184
次のページ →
翻刻
【右丁】
夜討をする事 習(なら)ひなり。道(みち)をふみてくた
びれたる所へ。敵(てき)よりこそ夜討(ようち)は望(のぞ)む所に。
中〳〵敵へはと油断(ゆだん)にかまへておる所へ。押(をし)
かけて討時。かならず大利あるものなり。諸卒(しよそつ)
道(みち)ゆきして。草臥(くたびれ)たると用捨(ようしや)するも時(じ)
節(せつ)により。すきまを見る事(こと)専(せん)一なり。又 今(こん)
夕(せき)着陣(ちやくぢん)して。あすの朝(あさ)是非(ぜひ)共夜のひき
あけに押(をし)かゝり。一 軍(いくさ)するは武略(ぶりやく)なり。
さだめてまづ一日も諸勢(しよせい)をやすめん
と。敵ゆだんもあるへし。第一 長途(なかみち)をは
【左丁】
こび来て。一日とやすめぬれば。人馬の足(あし)
へ血(ち)さがりすくみはて。はたらきあしき
事。よのつねの人もしる事なり。また
太平記(たいへいき)に。大館(おほたち)が伝(でん)にも此 言葉(ことば)あり
《箱:第九》 順(じゆん)の夜討(ようち)の事
▲敵 着陣(ちやくぢん)して諸卒(しよそつ)草臥(くたびれ)。其ところ不案内(ぶあんない)
なるを。夜討にするは順(じゆん)の討様(うちやう)なり。其夜
討て又あくる夜をこめて押(をし)よせ。城責(しろぜめ)を
するごとくに。仕寄(しより)をつけ。竹(たけ)たばにてさ
きを堅(かた)め。時のこゑを作(つく)りかけ。鉄炮(てつはう)を込(こめ)