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【右丁】
の雑人(さうにん)に酒(さけ)などのませ。あひつけことこま
かに見聞(みきく)事 専(せん)なり
《箱:第十一》 遠(とを)き敵を見る事
▲敵あひ十町も十二三町もへだて。いかさま
軍(いくさ)すべき体には見せながら。ゆたかなる
ふりにせば。此方より物見(ものみ)をやり。敵あひの沼(ぬま)
川(かわ)所々にさくなどふり捨(すて)。隠(かく)し勢うしろ
巻(まき)。近辺(きんべん)の茂林(もりはやし)夜軍(よいくさ)の手立(てだて)か。万事(ばんじ)
をとくと見さだめ。今(いま)五町をとりよせ備(そなへ)
をもたてんか。今五町も引とりくらゐを
【左丁】
もさけすむか。楠(くすのき)が伝(でん)に曰(いほく)。渡辺(わたなべ)の橋(はし)十町
こなたに物見(ものみ)を置。敵(てき)川(かは)を越(こす)と見ば。はやく
住吉(すみよし)へ来(きた)れといふ。又 天王寺(てんわうじ)に物見(ものみ)を置(をき)。敵
追(をい)きたらば。さきに帰(かへ)る事廿町はやか
れ。正成(まさしげ)は天王寺と住吉(すみよし)の半途(はんと)にあり。住
吉へ使番(つかひばん)をつかはす事。櫛(くし)のはをひくが
ごとし。相図(あいず)を定(さだめ)てかけいだすべきため
なり。しかのみならず渡辺(わたなべ)に至(いたつ)て。敵勢(てきせい)を
見て天王寺の味方を下知(げぢ)し。住吉(すみよし)に帰り
て兵(つはもの)に下知(げぢ)をし。其日馬をのりかゆる事