翻刻
あり其|餘(ヨ)の夢の説(セツ)は徐春甫(ジヨシユンホ)が古今医(ココンイ)
統(トウ)に詳(ツマビラカ)なり又|邯鄲(カンタン)の枕(マクラ)といふ事|仏氏(ブツジ)
の一生(イツシヤウ)の無常(ムジヤウ)の譬喩(ヒユ)なり唐(タウ)の開元年(カイゲンネン)
中(チウ)に呂翁(リロヲウ)といふ者|廬生(ロセイ)と云者と同じく
邯鄲(カンタン)の邸(タビヤ)に宿(シユク)す家(イヱ)の主(アルジ)黄梁(アハ)を炊(カシヒ)
て是に与(アタヘ)んとする間に呂翁|袋(フクロ)の中より
枕を取(トリ)出し廬生(ロセイ)に授(サヅケ)ていわく是に枕
せば栄耀(ヱイヨウ)汝(ナンヂ)が心の侭(マヽ)なる夢を見るべし
と云けれは廬生(ロセイ)悦(ヨロコ)び彼(カノ)枕をして臥(フシ)けれは
いづくともなく百官多(ヤククワンヲヽ)く来りて天子の
ごとく尊(タツトミ)四季(シキ)の遊景(ユウケイ)はいふにたらず好衣(コウイ)
珍膳(チンゼン)心の侭(マヽ)にして王位(ワウイ)にありて五十年と
覚し時夢さめて見れば亭(テイ)の長がいまだ
黄梁(アハ)をかしきおわらざる間也《割書:此コト異聞録(イブンロク)| 枕中記(シンキウキ)ニアリ》
此夢を見たる廬生(ロセイ)が心ざま知れてあさ
まし常(ツネ)に栄耀(ヱイヨウ)歓楽(クワンラク)を好心深きに