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なし抑(ソモ〳〵)道家(ダウケ)の教(オシヘ)は聖人(セイジン)の教(ヲシヘ)に対(タイ)し
ては異端(イタン)也といへとも仙人(センニン)の輩(トモカラ)とは各別(カクヘツ)
なり彼道(カノミチ)は虚無恬憺清浄(キヨムテンタンセイシヤウ)にして
無為寂滅(ブイセキベツ)を以て本(モト)とするによつてま
じへ合(アワ)せたる成へしすべて上古(セウコ)は人の心
直(スナホ)にして智深(チフカ)し故(ユヘ)に仙(セン)のなき事を
しれり末の世の人は道(ミチ)なくして智(チ)
浅(アサ)し故(ユヘ)に猥(ミダリ)に仙道(センダウ)を信(シン)じて長寿(チヤウジユ)
【このコマの左側は乱丁のためコマ39の右側から続く】
世に交(マジ)はらんや其時はいか成|山谷(サンコク)へも引(ヒキ)
こもるが道(ミチ)なりさやうの事もなく只長生(タヾチヤウセイ)
ばかりを願(ネガヒ)て山林(サンリン)に隠るゝは道(ミチ)にあらず
彼(カノ)仙道(センタウ)を聞に葛洪(カツコウ)三つの品(シナ)をあげたり
上仙(ゼウセン)は此身をもつて虚空(コクウ)に昇(ノボ)る是を
天仙(テンセン)といふ又|中仙(チウセン)は名山(メイサン)霊地(レイチ)に住(スム)是を
地仙(チセン)といふ下(ゲ)の仙(セン)人は形(カタチ)を脱(ヌシイ)て気(キ)のみ
天に昇(ノボ)る是を尸解(シカイ)といふといへり