翻刻
《割書:樟脳(シヤウノウ)ノ火物ヲヤカズ水中ニ|光(ヒカリ)ヲ増(マ)スコレ陰火ナリ》故に雨ふり又は
夜中に光を顕(アラワ)す是|陰(イン)火の時を得て
燃(モユ)か理(リ)なり 《割書:夜ハ陰|雨モ陰也》然れは狐火と古(フル)
塚(ツカ)の燃るは共(トモ)に陰火なれとも少しの
差別(シヤヘツ)有狐火は態(ワサト)|燃(モヤ)さんと思ふ心ありて
燃|古塚(フルツカ)は何の心もなく自然(シゼン)に焼(モユ)る也
酉陽雑爼(ユウヤウザツソ)に狐尾を撃(ウツ)て火を出す
とあり又は千年に成ル枯木(コボク)をもてはおの
つから燃(モユ)る事|曽(カツ)てあやしき事にあらす
博物志(ハクフツシ)本草綱目等に載ることく人ノ血(チ)又
は牛馬(ギウバ)の血(チ)地に落(ヲチ)て有ル時|湿気(シツケ)なとに
あへば必火出るとあり是|燐火(リンクワ)といふ物なり
故に剣戟抔(ケンゲキナド)にかゝりて死(シヽ)たる者(モノ)の塚(ツカ)は
時として燃(モユ)る事あり
又問|血(チ)を出(アヤ)して死(シヽ)たる者の塚(ツカ)にも燃(モユル)
もあり燃(モヘ)ざるもあるは如何(イカン)