翻刻
神(カミ)あり此神ある時は妖病邪気(ヨウビヤウジヤキ)の
しりぞく事 必然(ヒツゼン)の理(リ)なり其 信(シン)する
心(コヽロ)則(スナハチ)敬(ケイ)成か故(ユヘ)なりしかれは常(ツネ)に
敬(ケイ)を専(モツハラ)とせばをのづから異病(イビヤウ)に
あふ事 希成(マレナル)べし是等(コレラ)の道理(ダウリ)を
わきまへず敬(ケイ)もなくして猥(ミタリ)に祈(イノ)る
事あるまし杜子美(トシミ)が詩(シ)に子童(シトウ)髑(ドク)
髏(ロ)血(チ)模湖(ボコ)といふ此 詩(シ)を誦(シユ)すれば
瘧(ヲコリ)おのつから愈(イユル)といへりいかんとなれば
此詩奇妙(コノシキスウ)に能(ヨク)字(ジ)を用(モチ)ひたるを以也
本朝(ホンテウ)にても古歌(コカ)の名句(メイク)なと唱(トナヘ)ていゆる
事あり是皆(コレミナ)右に云ことく心の敬(ケイ)するに
よつて愈(イユ)る也瘧鬼(キヤクキ)此 詩歌名句(シカメイク)を
聞て感じて立去(タチサル)といふにはあらす名句(メイク)の
道理(タウリ)を合点(カテン)する瘧鬼(キヤクキ)ならば賢鬼(ケンキ)と
いふ物也 賢鬼(ケンキ)ならば豈屑(アニセウ)々として