翻刻
予(ワレ)心なしといへども病人は是を大に信(シン)し
病愈(ヤマヒイユ)る也 風俗通義(フウゾクツウギ)に鮑魚(ホシウヲ)を信(シン)して神と
なしたる事ありしかし同じく愈(イヤ)さば
かくあや敷事をしていやすは然べからす明(ミン)の
虞塼(グタン)が医学正伝(イガクセウデン)に古(イニシヘ)より妖(バケモノ)祟(タヽリ)を患(ウレヘ)
とす独老狐(ヒトリフルキツネ)の成精(シワサ)のみにもあらず人家(ジンカ)
の猫(ネコ)といへとも能妖(ヨクバクル)事あり大抵(タイテイ)其|妖(バカ)さる
る者(モノ)皆 性淫(シヤウイン)にして気血虚(キケツキヨ)する者(モノ)也
故に邪虚(ジヤキヨ)に乗(ゼウ)じて入物也いまた正(タヽシキ)人 君子(クンシ)
其外|充実(ジウジツ)の人は其|惑(マドヒ)を被(カフム)らずといへり
若(モシ)巫覡(カンナキ)の邪術(ジヤシユツ)をもつて治せば神(シン)弥 安(ヤス)
からす決して瘳(イユ)へからす斯(コ)の病(ヤマヒ)に遇(アフ)者(モノ)
謹(ツヽシマ)さるべけんや
釜鳴之説
或問云世に釜鳴(カマナリ)とて釜(カマ)のおのれと吼(ホユ)る事あり
此あやしみあれば必家に祟(タタリ)ありとて皆人