翻刻
常(ツネ)也再(フタヽ)ひ形(カタチ)を顕(アラハ)し来るは変(ヘン)也人
常(ツネ)に見 習(ナラワ)さるに依(ヨツ)てあやしみ恐(ヲソ)る理(リ)
の源(ミナモト)を知時は恐(オソ)るゝ事もなく又|怪(アヤシ)き
事もなし仏氏(ブツシ)の所謂(イワユル)幽霊(ユウレイ)といふ
にはあらす夫(ソレ)大極動(タイキヨクウゴヒ)て陰陽(インヤウ)を生し
五行集(ゴギヤウアツマ)りて此人を生じ一 気五行散(キゴキヤウサン)し
て死(シ)す死(シ)すれは魂気(コンキ)は天に升(ノボ)り体魄(テイハク)
は地に帰(キ)す《割書:今人死スルニ頭(ヅ)は熱(ネツ)シテ|足(アシ)ノ冷(ヒユ)ルヲ以て知ベシ》五行は又
大空(タイクウ)に散尽(チリツク)然れは死(シヽ)たる者二度形(モノフタヽヒカタチ)を
顕(アラワ)し来る事有へからす然とも常変(ジヤウヘン)
の二つありて時としては怪(アヤシ)き事も有
へし左伝(サデン)に鄭(テイ)の泗帯(シタイ)【「駟帯」の誤記ヵ】といふ者 羊肆(ヨウシン)と
いふ所にて伯有(ハクユウ)といふ大夫(タイフ)を殺(コロ)せり其後
伯有(ハクユウ)が形二度 顕(アラワ)れ来るとて国(クニ)人 恐(ヲソ)
れあへり或人の夢に伯有(ハクユウ)介(ヨロヒ)を着(キ)
て我まさに泗帯(シタイ)を殺(コロ)さんといへり果(ハタ)し