翻刻
【右丁】
鳥山(てうざん)は
どう
おもひ
な
を
しても
瀬川が事おもひ
きられずとう
ぞして
此
きやくときれて
せ川にあわんといろ
〳〵くふうをする
もし水さんへわたしは
はづかしいことでありんすが
どうでおはなし申んせんでは
わかりんせんからまあ
きいておくんなんし
どうしいんしたやらよいの
うちはそうもありんせんが
こうしてきがおちつきんす
とねつからめがみへんせん
いつそもふざとうさん
どうぜんでありんす
そのうへにしやくがおこつて
よこになりんすといつそ
せつなふありんす
【右丁下】
これ〳〵
きみよ
たびは
みちづれ
よはなさけ
とやら
おなさけに
あづかり
たい
【左丁】
しょかいからこんなばか
らしいことを申んすも
なにとかおもひなんせうが
どうでうちとけておめに
かゝりんすことは
なりんせんからおはなし
もうしんすと
いろ〳〵
あやなす
ゆしまのちぞうさんへも
ぐわんをかけん
したが
きゝいせぬ
現代語訳
【右丁】
鳥山はどう思い直そうとしても瀬川のことが忘れられず、とうとうしてこの客と別れて瀬川に会おうといろいろと工夫をする。
「もし水さん、私は恥ずかしいことでありますが、どうしてもお話し申し上げなければ分かりませんから、まあ聞いてください。どうしたものやら、良いうちはそうでもありませんが、こうして気が落ち着きますと、熱から目が見えません。いっそもう座頭さん同然であります。その上に借金が嵩って横になりますと、いっそう切なくあります。」
【右丁下】
「これこれ君よ、旅は道連れ、夜は情けとやら、お情けにあずかりたい。」
【左丁】
「初回からこんな馬鹿らしいことを申しますのも何とお思いになるでしょうが、どうしてもうち解けてお目にかかることはなりませんから、お話し申します。」と、いろいろと頼み、湯島の地蔵さんへも願をかけたが、効き目がない。