みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE1

地震前兆集 全 - 翻刻

地震前兆集 全 - ページ 30

ページ: 30

翻刻

を幸喰にせんと拾ひあつめ只忙然とあたり(四方)をながめ居る内艮の方に 黒煙たち登り火事よ〳〵と呼はれども半鐘打にもあらず次第 に火之手あがりければ辛き命を助りぬれど荷物を焼なはかつ かせんとあわてふためき逃場を尋んとすれとも家倒れあひて 道なく又は過半潰れかゝりし家なとにて通り得かたく其 内新通壱丁目亀屋惣吉といへる三味線師之裏蕪畑ある所を 見付此所へ荷物をはこぶべしとおもへども各力ぬけて持事あた はづ漸垣の竹一本ぬきて二人釣にて一個づゝはこふに亀屋は 瓦葺の家なるに過半倒れかゝりし横町を通ふ事なれば 今にも震動せばうたれ死せんとさらに安き心なし仕合に荷物も運 び尽しぬれば少しは心落付たれど寺町といふ所なれば南側ハ 寺院建並び北側は町家なれば四方へ三間ばかりづゝ空地有のみ 兎角火事覚束なく其内には爰に燃立かしこに火事よと呼 はりぬれども己々か事にかゝりて誰集まる者もなく江川町 砂張屋某といふぬり物問屋より出火大西風なれバ次第〳〵 と北東の方へ燃ぬけると見申併し此邊は風上なれバあへて騒 ぐ人もなけれ旅之空にては安き心少しもなし荷物を運びし 蕪畑ハ跡にて聞けば伊勢屋平治らといへる家につくりし畑と なむ此近隣之人もおひ〳〵裏の畑へ諸道具を持出しけれども 今宵ハ雨露を凌ぐへき心もつかざりしかば四日市の地震の噺 などして日の内に風囲ひの用意然るべしと予心付けれバ 実に尤なりと各々戸障子抔にて四方を覆ひぬ我々も此侭にてハ