みんなで翻刻ver1

コレクション: STAGE1

地震前兆集 全 - 翻刻

地震前兆集 全 - ページ 33

ページ: 33

翻刻

た炭の火にもまさるなどいひて悦びぬ今日は夕饌おもとゝのへ ねば串柿にて飢をしのぎをるうち伊勢本より使来りてこ の者はなしに今日辰之刻松村仁兵衛殿被立寄支度御誂なれバ 用意致し居ける内彼地震故帳面も我方へ捨置ていつれかへ立退か れたりと語りぬ是にて思ひ合すれば鞠子宿にて岡部の馬士 我々と同時に参りなば問屋場にて地震にあふべし江川町之出 火は壱丁とも隔たづ風上の事なれは命は助かるとも四人にて 本馬四駄なれば火急に持はこぶ手立もなく勿論問屋場は即 時に潰れしと聞ば一時に灰(ハイ)になるべきに幸にて鞠子にて遅刻 せしは実にありがたく神慮とやいはむ江川町の出火は新かい町 上中下伝馬町鋳物師町院町上下横田町残らず焼失纔に 東の棒|鼻(ハナ)南側十五軒北側十六軒残りし計り東西十七八丁 南北壱丁余家数百軒計も焼亡四日夜四ツ時頃火鎮而今夜 は御触出しありて一軒より男一人宛之提燈持参して夜通し火盗 の用心にまはるべしもし無提燈にて歩行するものあらば其所にて とくと改め通すべしと厳しく仰渡されけれは四方に拍子木の音か まびすしく其内には下町辺に火事なりと呼ばる又あやしき者の 此町へ逃込しなどいひ継ぐ其度毎にむねに針【右にう脱カ】たるゝ心地せり女 子供は畑中を假小家にかたまり居て震動せはいかゞせむかくやせ むなど口々にいひ泣わめく聲は哀といふも余りあり丑三時頃にな りたれば一天かき曇り雨ふり出さんとしければ持出し道具をぬら さじと騒きたちけれども家潰れ或は傾きて容易に這入がたく