翻刻
したればしらず
同九日曇朝五ツ時ゟ雨降出しければ裏住居之人々も俄に畳諸
道具抔家へ運ふ併し潰し家にては矢張畑住居見るにしのびざる
事也我々は幸に荷物を残らず伊勢屋の裏座敷の縁側を借りて
入れ四人とも同じ座敷に這入れば雨の憂なし今朝は四人とも同
家にて粥馳走になる伊勢木より金山寺味噌大根漬添て飯来
る此使の咄に馬継立は未たなけれども雇人足にて奥津迄かつが
せなば同所は泊りに差支る事もなきよし併し壱駄四人かゝりにて
壱人前五百文宛位はかゝるよし壱駄にては弐貫文なれば其先
之事など案じ暫見合べき田答へぬ昼飯の時も此夜より味噌汁
馳走になる五日目ぶりにて畳の上の食事なれば一方ならず心能
すごしぬ雨は漸く止みぬれども空曇りて快晴の様子も見えず
午時半頃震動四日より此方の地震也中飯後より磯田高須氏へ
礼に行酒壱升此家にて無心致し持参高須氏親子とも酒徒な
れども酒の売買無ければ手土産にしかるべしとて持ニ行しに大
悦ひの由七ツ時磯田帰る頃は快晴する程なく高須氏の息子半蔵
入来遅過刻の体に来られぬ長尾荘右衛門入来一酌汲かはし長尾氏|噺(虫損カ)
に夜大工町之者火消番を受け居しに火事なりと呼はるにぞ狼狽無
提燈にてかけ出しに盗賊と間違町々にて大勢に取まかれ打叩かれなど
して難儀に及びしと地震後は夜番厳敷無提燈の者は改め通す
へきおとの御触あればなり伊勢本より今夕ゟ翌日迄の用意とて
このしろ摺身大根漬大根煮〆添て来る四ツ時八ツ時雨及地震