翻刻
売女らしきもの大勢つれ立て通りければ尋ねしに江尻の飯盛の
よし普進出来まで暇出ければ各旧里へ引取との事なり是にても
江尻の難渋思ひやられけり膳椀を商ふ名古屋の商人荷物は清水
港へ預け置府中を商ひするうち伝馬町之旅宿も類焼して金子も三
拾両焼たり清水に預け置し荷物は悉【娄は婁の略字。訓はむなし。釆偏に女は不明。】く津波之ために失ひぬれば帰
国せんにも路金【旅銀を取消】なければ此家へ売りし膳代を請取路|銀(金)にして|路(帰)国
するとの咄予直に商人に逢て聞ぬ又伝馬町之鼈甲屋掛川へ出商ひに
行しに地震にて旅宿も倒れ間もなく出火にて荷物も焼たれば詮方なく
府中に帰りて見れば我家も同時に焼たり留守の事なれば何れも丸
焼なりとぞ気の毒の噺なり昨十三日より町々有徳なる町人申合
せ驂府中後藤屋敷に於て米施行あり壱人前玄米壱合壱勺宛
に当る今日は車にて搗かせしとて白米にて同様施行あり五百駄も出候由
風聞なり一昼夜にて五六度も震動
一十五日朝寒気後暖今日に至りては魚類も遠州辺より来り居酒店
蕎麦屋抔も商ひ始めければ間の宿位は事も足る様に成たれとも醤
油の売買なく何れも不自由する由将【醤の酉を省略】油土蔵抔は悉くつふれたれ
ばなりけふも袴着紐解之祝にて三五日前ゟ親類近所なと振舞ふ
国風のよしなれども此騒動にて弛【異体字に施と同じ旁あり】々なし町々の施行も三日の由なれば
今日限りとぞ暮六ツ時頃伊勢木より使来り明朝より漸々馬継立
になるよし申来りければ魚の水を得し心地して夜の明るを待の
みけふは一昼夜にて六度斗も震動
一同十六日曇未時分ゟ大雨早朝より近隣の世話になりたる所へ禮