翻刻
一同十八日晴大風寒幸今日は川合橋仮橋出来新橋ハ少しの廻り
道にて継立出来候由大悦巳之刻馬来りければ出足川合橋より東
之方はさしたる事もなく柏原立場抔は不断の如く原駅も潰
家抔は四五軒あるのみ只石の鳥居石の燈篭など悉く倒たり
沼津の駅へ来り見れば多分 【右に(脱字)】れ旅篭屋町も稀には建たる家も
あれども二三尺宛も傾き泊るべき家は一軒もなし問屋場到
りて見れバ馬壱疋もなけれバ虎屋へ戻り見るに表の方潰たれども
幸に奥座敷潰れ残り【右に居】たれバ泊らんといふにあるじの此通りになり
居たれバ何分火災心元なく御荷物ハ行届かず若し出火の節ハ
此向ふの横町より二町程ハ田畑ゆゑ其所へ出火の節ハ御荷物銘々
に運び下さる積りに御承知なれバ今夜の御世話可申との事なれども
外に泊るべき家なけれバ詮方なく座敷へ通れバ障子襖ハ弓の如くな
り鴨居抔も口明きたる所ありて風吹ごとにゆれる音は地震にもま
かひて少しも安き心なし程なく馬一疋参りけれバ西荷物を着
させ御助
沼津宿ハ地震後假に小家を建しに十三日夜五ツ時大手先より出
火して東の方へ弐丁余焼亡假小家も悉く焼たりいたはしき
事也
三嶋泊りと出足又其後一疋参りたれバ吉荷物附けさせ猶蔵同様
出足原宿の馬士の噺に八日九日頃ゟ十三四日頃迄は武家方荷
物を由井駅より原駅まで通し人足にて本馬壱疋金壱両一歩
ゟ金壱両位まで買上げ来られしとぞ夫を思へば府中に逗留