翻刻
地横に幾筋も【割を消して】裂たり千貫通も少し破損人家ハ皆潰れたり三嶋入口
火除堤の中程三尺余も堤とも横に地裂清水湧出川之如し定宿なる
大和屋は裏座敷少し残り居たれバ立寄しに井村半四郎永本新
平親子に出会ひ是ハ昨朝より馬支にて逗留のよし今日ハ幸ひ
馬ありて継立になりしとて先へ立出磯田予が荷物ハ沼津泊り故
馬なく大和屋に休足此家へ来りし近所之婦人の咄に伊豆温泉場
修善寺抔も山崩れ温泉口を堰止めたれバ何れへ吹出し候哉難斗
各かけはなれたる山へ逃げ今に山住居との事なり午時過に漸く馬
来りぬれバ附出しぬ問屋場の近邊ハ別ら裂しく三嶋明神本社をは
じめ拝殿絵馬堂悉く潰れ山門傾き五重塔のみ無難也石垣鳥
居なども微塵になり明神前ゟ東の方へ壱町余焼失駅も悉く
倒れたり新町橋も少し落ち夫より橋向ひはさした事なく箱
根山へかゝれバ山崩れ松之樹倒れ馬荷物漸〻通り候位也塚原
村一の山三谷篠原邊は無難なり境木邊に至れバ雪五寸余も積
り居たり十六日に降たりとぞ箱根之駅は前後とも無難にて中
程笹屋のあたりは軒別に倒れたり三嶋宿大和屋の木村屋と
いへる宿屋あり不思議に一軒無難にて少しも傾きたる様にも
見えず併し礎より壱尺計りも東の方へ総躰土台とも寄たり
是等ハ誠に奇なりといふへじ峠迄来る道にて飛脚三人に
あひ咄を聞に袋井掛川両駅にて状個六十駄焼失ひ渡し方
なければ江戸へ【帰を消して】戻るとの事なり又信州小諸之者参宮して
江戸へ下るといふ故国許の事など尋ねしに妙見町藤屋に七日