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【右丁】
となん曼荼羅供(まんだらく)おこなはるゝ时(とき)にこゝに樂屋(がくや)をかまへらる是(これ)を過(すぎ)て
陽明門(やうめいもん)に入(いり)ぬ此額(このがく)は 院(ゐん)の御門(みかど)おりゐさせ給(たまひ)てかゝしめ給(たま)へり
となんこゝより《振り仮名:人〻|ひと〴〵》裾(きよ)をくだし侍(はべ)るそのめぐりはみな廽廊(くわいらう)なり
此廊(このらう)を左右(さいう)の樂屋(がくや)とす瑞籬(みづかき)の中央(ちゆうあう)にあたりて舞臺(ぶたい)をたつそれ
よりやゝ拝殿(はいでん)にのぼるすべてかうやうの事 羅友(らいう)といふとももたして
しるすにいとまあらじやがて十三日より御法事(おんほふじ)はじまる其日(そのひ)の
證義(しようぎ)は妙法院宮(みやうほふゐんのみや)とぞ殿下(でんか)をはじめて着座(ちやくざ)の公卿(くぎやう)それ〳〵とのぼり
すゝむ堂童子(だうどうじ)四人 簀子(すのこ)の座(ざ)にわかちつく季雅朝臣(すゑまさあそん)は音樂(おんがく)の行(ぎやう)
事(じ)にて伶人(れいじん)をひきゐ衆會(しゆうくわい)の所(ところ)にむかふかへりのぼりてかの座(ざ)の上(うへ)に
つく一曲( きよく)は階(はし)の前(まへ)にて近光廣有(ちかみつひろあり)これをかなづ衆僧(しゆそう)座(ざ)につきをは
りて階(はし)をくだり退出(たいしゆつ)し侍(はべ)る夕座(せきざ)の舞樂(ぶがく)は賀殿(がでん)古鳥蘇(ことりそ)太平楽(たいへいらく)長(ちやう)
保樂(はうらく)陵王(りようわう)納蘇利(なそり)なりとかやむべも八の音(ね)よくとゝのほりてとも
【左丁】
がらをうばふことなからん事(こと)を思(おも)ふかのもゝのけ物(もの)まひけんほ
どこそなからめをさまれる世(よ)の聲(こゑ)はこれにもしか〳〵きこゆらん
かしいでやおのが家(いへ)の名(な)にあかれたるいづみの水(みづ)はたえて久(ひさ)しく
なりにたるをいにし年(とし)の夏草(なつくさ)の露(つゆ)おもひかけぬ【平出】
今上(こんじやう)の仰(おほせ)ごとありて和歌(わか)のうらなみふたゝびむかしにたちかへり
つゝかゝるいみじき御法(みのり)の場(には)に立(たち)まじり侍(はべ)ることさはおほろげの
えにしにもあらじひとへに世(よ)をおもふ【平出】
《振り仮名:大𣗳|たいじゆ》のひろき御(み)めぐみはげに筑波山(つくばやま)のかげにもまさりてあふ
ればいやたかゝるべしそのかみわがたらちね《振り仮名:藤■|とうせう》【粛ヵ】はさしも【平出】
大權現(だいごんげん)の御(み)うつくしみふかくはる〳〵こととひかはし給(たま)へることにや
文禄の二年ばかり江府(ごうふ)にまかりたりしにも貞観政要(ぢやうぐわんせいえう)といふ文(ふみ)
よましめてきこしめしけりとなん行状(ぎやうじやう)に見ゆめりさるべきをり